山路力也

フードジャーナリスト・ラーメン評論家・かき氷評論家。著書「トーキョーノスタルジックラーメン」他。連載「SENSE」「世田谷ライフmagazine」「Yahoo!ニュース個人」「All about ラーメンガイド」他。「千葉拉麺通信」「トーキョーラーメン会議」「ラーマガ」運営。「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えています。

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麺やふくろう@馬橋「アジディープインパクト」600円

 私が共同編集しているウェブマガジン「ラーマガ」の限定ラーメン企画「NAKED」の参加作品。基本的にオープンして間もないお店にお願いすることは稀なのだが、店主の青木さんはこれまで多くのお店で限定メニューなども作ってきたベテランなのでお願いした。そして期待以上の驚きの「かけラーメン」を作ってくれた。 まずその名の通りインパクト十分のビジュアルが凄い。黒いスープに黒い麺。千葉県産小麦である「ふさの麦」の全粒粉を使用した自家製麺は、まるで日本蕎麦のような色合い。ややボソっとした食感と素朴な風味が楽しい。なお、試作と撮影の段階では全粒粉の配合が定まっていなかったので、実際のものよりもやや色が濃くなっている。 スープには動物系素材は使わずに房総産マアジの焼き干しを使用。タレは大高醤油の「富士虎醤油」を使用。大高醤油の「フジトラ」ブランドは、大勝軒系などでも昔から使われている醤油。その中でも最高級の「富士虎」を贅沢に使用している。深みはあるのにスッキリと飲み干せるような、アジの旨味がほとばしるスープが良い。スープに浮かべる油もアジの油で、湯気と共に立つ焼き干しの香りが食欲を誘う。薬味のネギももちろん矢切ネギだ。 千葉の食材だけで作った地産地消スタイルのNAKED。海の幸、山の幸が豊富な房総千葉だからこそ出来るかけラーメンに大満足。販売は6月19日(月)〜7月15日(土)一日10食の限定販売となる。

一風堂 ららぽーとTOKYO-BAY店@南船橋「博多細つけ麺」780円

 一風堂の期間限定メニュー「季節のラーメン」。今年の初夏編は毎年恒例の「博多細つけ麺」である。低加水細ストレート麺のいわゆる博多麺を水で締めて、豚骨のつけダレに合わせる組み合わせは、まさに博多のつけ麺と呼ぶべきもの。一風堂は太麺の豚骨魚介つけ麺も提供するが、やはり博多発祥で豚骨ラーメンの店なのだから、この組み合わせを看板メニューのつけ麺として出して欲しいと思う。 とにかくザクザクとした食感の麺が心地よい。これは他のつけ麺では決して感じられないものだ。細麺と太麺だと、実は細麺の方がつけダレをホールドするのに適している。麺と麺の間につけダレがうまく入り込んで、ザクザクした麺を食べるたびに豚骨スープが滲み出てくる。これも太麺のつけ麺では感じられないことだろう。 赤丸でもお馴染みの辛味噌は好みに合わせて。2015年の登場以来、唯一気になっているのがオリーブとオリーブオイルの存在。正直オリーブオイルの香りが邪魔である。赤丸で使っている黒香油をそのまま浮かべてくれるだけで良いのだが。オリーブの代わりにキクラゲ入れてくれるだけで良いのだが。 6月1日より7月17日までの期間限定販売メニュー。なお、このメニューは販売しているところとそうでないところがあるので、一風堂のウェブサイトでチェックしてから出掛けて欲しい。ちなみに千葉県内で販売しているのはららぽーとTOKYO-BAY店のみである。

麺やふくろう@馬橋「GYU丼」980円

 2月19日、馬橋にオープンした新店を再訪(前回訪問時はこちら)。前回と違って店の前に置かれている電飾の看板がふくろうオリジナルになっていた。今は垂れ幕もオーダー中とのこと。夜にしか来た事がないが、視認性がやや悪いのでやはり派手にしておかないとね。 今回は期間限定メニュー「GYU丼」(980円)狙い。これはイタリアンや肉バル、居酒屋などジャンルの異なる飲食店が一つのテーマで「牛丼」を再構築する「SESSION」というコラボイベントの一環。ラーメン屋であるふくろうがどんな牛丼を出すのかと思ったら、ご飯ではなくまぜそばで、しかも牛挽肉で器を作るという凄いアプローチで創作してきた。 肉の重さは300g以上となかなかのボリューム。味を入れて火も入れて丼型に成形したまさに「牛丼」は、注文を受けてから軽く煮ることで熱と味を仕上げに入れるスタイル。麺はシンプルな油そばだが、甘く煮たタマネギが牛丼らしさを表現。丼を崩しながら混ぜて食べる今までにない経験はなかなか楽しいものがある。途中でラー油や酢を入れて味の変化を楽しんでもいい。 一日5食の限定メニューで、かなりリピーターもいるそう。この日もこのメニューを目がけて入ってくるお客さんもいた。28日(金)までなので急いで駆けつけるべし。

旭川ラーメン梅光軒 千葉そごう店@千葉「鮭玉」950円

 2015年にオープンした「梅光軒」の千葉初進出店。関東初進出の丸の内店は「ばいこうけん」という平仮名表記の屋号で、メニューも若干異なるので千葉初というよりも梅光軒という屋号で出店するのは関東初になるのではないかしら。海外への出店が中心のようだが、梅光軒もいつしかチェーン店のようになってしまった。私が最後に食べたのも2年前の台湾だったと記憶する。 そごう千葉店のこの場所は前に「山頭火」が入っていたので、旭川ラーメン店が続くことになる。偶然だろうけれど。 久々なのでシンプルに醤油を頼もうかと思ったのだが、メニューにあった「千葉限定」という文字に釣られてこれを。メニューの写真では何が鮭玉なのか分からなかったので、お店の人に確認したところ「鮭節と呼ばれるものをスープに加えて、より深みのある味に仕上げています」とのことだったが、出て来たラーメンはメニューの写真とは異なり鮭節が海苔の筏に乗って来た。分かりにくいので変えたのかな。てっきりスープがダブルスープかなにかになっているのかと思ったのでやや拍子抜け。  軽めのスープに鮭節が溶けると少しずつ味わいが変わっていき、最終的に旨味がまとまるような。逆にいえば鮭節が溶けていない状態のスープはやや物足りない。もう少し味にエッジが立っていると良いと思うのだが、デパートという立地を考えると万人受けの味付けにしているのかも知れないな。

【新店】二九八家 いわせ@本八幡「二九八家ら〜麺」1,000円

 千葉を代表する老舗人気店「ニューラーメンショップいわせ」が、惜しまれつつも39年の歴史に幕を下ろした。そして3月22日、装いも新たに「二九八家 いわせ」となってリニューアルオープンと相成った。店主の岩瀬さんはいわせ店主の息子さん。元々はいわせで働いていたが、自分の代になった時に自分の店以外も知っておく必要があると、今から十年前に「麺屋武蔵」の門を叩いた。当初はもっと短い修業のつもりでいたが、武蔵の仕事に熱中し十年間。本店の番頭まで勤め上げて堂々の凱旋帰還である。 今までの店とは違う味、違う屋号で自分の店をやりたいという話を聞いた時、正直実に勿体ないことだなぁと思った。というのもいわせは街道随一の人気店で、今もなお多くのファンがついている店だ。その店をわざわざ閉めることはない。いわせはそのまま受け継いで、限定ラーメンを出すとか、あるいは別の場所に自分の店を出すとか、いくらでもオプションがあるのではないかと思っていた。しかし岩瀬さんは新しい歴史を紡ぐ決意をした。お父様がそうやってゼロから初めて人気店を作ったのだから、自分もゼロからやってみたいというのは当然のことなのかもしれない。 岩瀬さんとはいわせ時代はほぼ面識がなかったが、麺屋武蔵で何度も顔を合わせている間柄。オープンしてから1ヶ月近く経っての訪問だっただけに「山路さんいつ来てくれるのかなとずっと待ってました」と言われてしまった。何しろオープン日のタイミングから怒涛の出張ラッシュだったのでいやもう申し訳ない。やっと顔を見られて良かった。その出で立ちや店の内装やメニューのデザインなど、武蔵のイメージがそのままあるのに、場所はあのいわせという、なんとも不思議な感覚だ。 「二九八家ら〜麺」は自慢の具材が乗ったオールスターの一杯で、この構成は武蔵譲り。優しく甘みのある背脂豚骨スープにキリっとした醤油ダレ。このスープはいわせとも武蔵とも違うが、いわせのようでもあるし武蔵的でもある。乳化したスープの甘さと醤油の味わいが相まって、これはなかなかクセになる味わいだ。麺はカネジン食品に特注した平打ち麺で、みっちりとした密度の高いもの。ラーメンにもつけ麺にも使うとなるとこういう麺が最適だろう。丼や盛りつけ含めてビジュアルはまさに武蔵だが、いわせならではの辛ネギが乗っているのが感涙もの。ラーショの辛ネギは本部のタレを使っているが、こちらはもちろんオリジナルでラーショ時代の味をイメージしているのだそう。ほぼそのイメージは踏襲出来ていると思う。 39年千葉の人たちに愛されてきたいわせが次のステージへ。自分の味で勝負したいという心意気や良し。これまでのファンにも理解して貰え、末永く愛される店になって欲しいと祈る。

一風堂 千葉店@葭川公園「コンソメ中華そば」950円

 「季節のラーメン」と題して、一風堂で春の限定メニューが始まっている。今年の春メニューは「コンソメ中華そば」で、2015年に新横浜ラーメン博物館に期間限定出店していた「NARUMI-IPPUDO」の「コンソメヌードル」がベースになった一杯を提供している。 醤油味の和出汁とビーフコンソメをブレンドしたスープは、福岡県糸島「北伊醤油」の淡口醤油にポルチーニや昆布などの旨味をプラスしたカエシに、ビーフの旨味が凝縮されたコンソメスープと見事に調和している。NARUMI時代より若干旨味が稀薄でカエシもやや弱めになっていて、正直最初はやや物足りなさを覚えるのだが、途中から丁度良い塩梅になってきて最後まで楽しめる。 麺はパンに使われるフランスの強力粉「ドヌール」を使った中細平打ち麺。個人的にはもう少し固めに茹で上げてある方が麺の良さを楽しめる気がしたが、ザックリ感も残ってはいたので許容範囲かな。具は大きなローストビーフが2枚に芥子菜、エリンギ、赤タマネギ(アーリーレッド)、フライドオニオンなど。エリンギはメンマ代わりにというアイディアで細長くカット。中でも芥子菜が良いアクセントになっていて、コンソメとタレでやや甘くなりがちな口の中をうまくリセットしてくれる。 さて問題はこのラーメンの950円という価格だ。もちろん単純にこの一杯には950円の価値があると思うし、満足度は高い。しかし、通常の赤丸や白丸にランチセットをつけた価格とほぼ同じとなるとどうだろう。ラーメン好きや一風堂ファンは食べるだろうが、一般客が手を出すかどうかが微妙なラインだと思う。このラーメンのコンセプトが「この味、みんなにストライク。」というのであれば、より多くの人にリーチ出来るような戦略的価格設定がされていても良かったのかな。例えばローストビーフを一枚にして880円とかだったら、より頼みやすくなるのではないかなとは思う。

【新店】山亀家 西千葉店@西千葉「豚骨醤油」760円

 今月7日、西千葉駅南口にオープンした新店。南口のロータリー手前、線路沿いを千葉方面に少し入ったところで、駅から歩いて1分かかるかかからないかの場所なのだが、奥まっているので視認性は低い。大きな金色のチャネル文字の看板が掲げられている。以前は植栽があったところを潰して駐車場スペースも2台分確保している。 この店は茨城に本拠を構える「清六家」の直系店ということなのだが、おそらく清六家のFC店ということなのではないかと思う。清六家は横浜家系ラーメンと謳っているが、こちらの店には家系の文字はない。西千葉駅前は同じ南口に人気店「武蔵家」があり、北口にも「吟家」がある場所だけに家系を謳う方が良いか否かは悩むところだろう。 メニューは「豚骨醤油」「鶏」「中華」の3本柱。当然初訪なので「豚骨醤油」760円をオーダー。好みを聞かれたのですべてお任せで。武蔵家では無料のライスだが、こちらは炊飯器が置かれていて自由に食べられるシステムになっている。しかし「OPEN記念」とも謳われていたので、恒常的なサービスかどうかは不明である。 出て来たラーメンはしっかりと乳化した豚骨醤油スープ。昨今のチェーン量産型家系のスープとほぼ同じ色味と味わいである。塩度はかなり高めで白ご飯が合いそう。麺はストレートの中太麺なのだが茹で加減はかなり固く、結果としてスープがあまり乗ってこないのが残念。チャーシュー、海苔、ホウレンソウ、ネギ、メンマ、ウズラ煮卵などの具材は綺麗に盛られている。 家系とは謳っていなくとも量産型家系であることが間違いなく、武蔵家の至近でこのラーメンを出すというのは、なかなか勝負的にも難しいと思う。さらにこの奥まった立地である。鶏白湯ラーメンがもう一つの看板メニューのようだが、そちらを推していけばうまく差別化が出来るのではないかしら。

【新店】こってりらーめん貴@稲毛海岸「しょうゆらーめん」700円

 今月1日、稲毛海岸にオープンした新店。この場所はこれまで「たかし屋」「豚ゴッド」と増田家系列の店が入れ替わっている場所。豚ゴッドのオープンが2016年2月なので、およそ1年ぶりにこちらに訪問することになるのだな。 この看板の色合いや店名から某人気店との関連も想起されるが、おそらく増田家が独自に作ったブランドであろう。店主の方は以前増田家で働いていた方だったし。直営かどうかはさておき関連店であることは間違いない。 そんなわけでこちらは某人気店、つまりは「なりたけ」のインスパイア系である。「しょうゆ」「みそ」の2本であとはトッピング。ちなみに一品料理に「味な鶏」というおつまみがあるのだが、これは以前「たかし屋」にあったメニューと同じ名前だ。 食券機制で食券を渡す時に「当店は味や脂が濃いめですがいかがなされますか」的な注意喚起がある。もちろんノーマル、そのままでお願いする。スープベースはライトでそこに背脂がビッシリと浮く。醤油ダレはなりたけよりも濃い目で味も強い。っていうか、これ豚ゴッドの時のカエシに似てると思うのは先入観だろうか。具もバラロールチャーシュー、モヤシ、メンマ、ネギとなりたけスタイルを踏襲している。麺はカネジン食品の中太麺。 なりたけをイメージするとまったくの別物。特に背脂とタレの味のバランスが異なる。しかしそれはあくまでもなりたけと比べた時の話であって、このラーメンそのもののバランスはとても良いと思う。カエシがキリッと立っていて背脂がしつこくならない味わいは個人的にも嫌いではない。途中からモヤシやネギと麺をごちゃまぜにして一緒にくらいつく感じも良いのだなぁ。 弁慶の流れを汲むなりたけが千葉に出来て、なりたけ出身の福たけも店舗を広げるなど、ある一定の認知度がある背脂チャッチャ系。この醤油の強い合わせ方はある意味千葉らしいアレンジとも言え、千葉スタイルの背脂チャッチャ系と言っても良いかも。背脂ラーメンのあまりないエリアにこれからも出店してくれたら嬉しいな。