第10回:風来房(行徳)

知る人ぞ知る屋台で千葉のご当地ラーメン「竹岡式」が進化する

当地ラーメンという言葉をご存知だろうか。その土地に根付いたその土地特有のラーメンのことで、札幌味噌ラーメンや博多の豚骨ラーメンといった誰もが知る定番ラーメンから、山形の冷やしラーメンや白河の手打ち中華そばなど、ラーメン好きでなければ知らないマニアックなものまで数多く存在する。その土地ごとに違った表情を見せる個性豊かなラーメンたちは、その土地の人々によって育まれたひとつの「文化」と言っても過言ではないだろう。

 そんなご当地ラーメンが千葉県にも存在する。富津市の竹岡漁港にある「梅乃家」が発祥とされる「竹岡式ラーメン」がそれだ。麺は乾麺を使いチャーシューの煮汁をお湯で割
るシンプルな製法。そしてしっかりと味のついたチャーシューに刻んだ生タマネギ。何十年も地元で愛されている素朴な味わいを持つ竹岡式ラーメンは、発祥地の富津市竹岡はも
ちろん、主に内房を中心に楽しむことが出来るが、この味を提供する「屋台」が市川市行徳にある。

 君津生まれの店主にとって「竹岡式」は小さい時からに慣れ親しんでいるまさにソウルフード。当初は自分のためだけに作っていたが、店主が食べているのを見ていた常連さんの間で評判をよび、ついにはメニューに並ぶようになったのだという。

 一見シンプルなつくりのラーメンだが、シンプルだからこそ気を使う部分も多い。スープになる「水」には店主の地元君津の天然水を運んで使用し、チャーシューの煮汁しか使わない製法の竹岡式ならではの弱点とも言える「うま味の物足りなさ」も昆布ダシを加えることで補った。進化した「新・竹岡式」とも呼べる味だ。

 食べ物を食べる時にはその環境も大きく左右する。漁港のお世辞にもお洒落とは言えないお店で食べる竹岡式は格別旨い。そのラーメンをそのまま街中の一軒店で食べても、おそらく同様の感動はないだろう。そういう意味では、このラーメンには屋台がよく似合う。刻み生タマネギをたっぷり乗せて、醤油の香りを感じながら麺が伸びる前に一気にすする。味がいくら進化したとしても竹岡式の美味しい食べ方は変わらないのだ。