第22回:牙(蘇我)

高田馬場の人気店が己を超える味に挑んだ唯一無二の豚骨醤油

の空といえば高田馬場にある都内屈指の人気ラーメン店。雑誌やテレビでその名声を欲しいままにするこの店が、新たな味に挑戦する店をこの春フェスティバルウォーク蘇我内にオープンさせた。その名も「牙KIBA」。俺の空というビッグネームを敢えて使わなかったあたりに、この店に対しての新たな意気込みが感じられる。

 店主の嶋本宗薫氏は、当初俺の空としての出店を打診されたのだがそれを断ったのだという。それは俺の空のラーメンが、未だ嶋本氏自身の中で満足していない日々改良を重ねている味だからだ。しかし同時に俺の空とは違ったアプローチで、新たな味に挑戦したいという気持ちも芽生えた。そこで違う名前、違うラーメンで勝負する店としての出店を決めたのだという。この「牙」という店名は動物が本来持っている武器の象徴。本来自分自身の持っているモノで俺の空とは違った新しい味に挑戦したい、という店主の思いがこの店名に込められているのだ。最初は千葉を意識したラーメンも考えたそうだが、やはり千葉のお客さんにも自分の食べてもらいたい味、迷いのない味を提供したい。その思いから生みだされたラーメンが、この店の看板メニュー「汁そば」だ。

 800人分は仕込めるという大きな回転釜に、トンコツと鶏ガラを入れて強火でガンガン炊きあげた白濁のスープに、直接魚系素材をぶち込んでかき回す。しかしそんな豪快で大胆な手法から生まれたラーメンは驚くほどに繊細な味わいになっている。油分も濃度もある濃厚なスープだが、最初の一口目は少し物足りなさを覚えるほど繊細。しかし飲み進めていくに連れて、うま味がどんどん体の中に蓄積されていき、まったく飽きることなく最後まで飲み干してしまう。瞬間の美味しさではなく、一杯を食べ終えた時の美味しさが緻密に計算されたこのバランスは、お見事としか言いようがない。

 俺の空の遺伝子を持った新しい味は、東京では決して味わうことの出来ない、千葉オリジナルの必食の味なのだ。