第23回:らー麺にしかわ(鎌取)

流行にとらわれない実直な一杯が目指す「感動する」美味しさ

食店である以上「美味しい」というのは最低条件である、と私は常日頃考えている。美味しいことは当たり前。それ以上もしくはそれ以外の「何か」があるお店が、もう一度行ってみたい、誰かを連れていきたいと思える、いわゆる「いいお店」なのだろうと思う。例えば接客、例えば雰囲気、例えば値段。そして手間を惜しまずに、より美味しく、より上の味を目指す姿勢も、いいお店になる要素の一つであろう。

 この春、鎌取南口に出来た「らー麺にしかわ」は、地元でじわじわと人気を呼んでいる新店である。ラーメンが最早ブームとは言えないほど私たちの日常に浸透した昨今、注目を集めるために珍しい具材を使ってみたり、変わった調理法で作ってみたり、一瞬目を引くラーメンを出す店が増えている。しかしこの店のラーメンは正攻法。奇をてらうことなく、正面からラーメンに向き合っている姿勢が丼から感じられる。一見何の変哲もない一杯だが、その中には腰が据わった「凄み」すらある。

 豚骨醤油、中華そば、つけ麺。この3種類のメニューのために3種のスープを仕込む。そして麺も粉の配合や切り刃などを変えてこれも3種類の麺を毎日打つ。人によってはそれを手間がかかる、効率が悪い、と言うかも知れない。実際この店も当初は1種類の麺でと考えたそうだが、やはりその一杯に合う麺の方が美味しいに決まっている。そう思い打ち分けることにしたのだという。美味しいものを提供したい、と考えれば当然のことを、この店は当たり前にやっているだけなのだ。

 「美味しいのは当たり前。その先にある感動する一杯を作りたい」と静かに語る店主。今千葉で一番「いいお店」になる可能性を秘めた店がここ「らー麺にしかわ」なのだ。