山路力也

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麺処まるわ@作草部「作草部式焼きラーメン すっぴんカレー」850円<限定>

 その創業は2008年と、十年以上にわたり人気を集めている実力店。今の時代、十年お店を続けていくということは大変なこと。そんな中で今も地元に密着した営業スタイルで、変わらぬ人気を守り続けているのは素晴らしいことだ。 レギュラーメニュー同様に限定メニューのクオリティが高いのもこの店の特徴。様々なアイディアを具現化しているのは、現店長である庄野氏の力量が大きい。今回のメニューは私も責任編集に名を連ねているウェブマガジン『ラーマガ』の限定ラーメン企画の一品。「NAKED」と名付けられた企画の趣旨は、麺とスープだけの「かけラーメン」であるということ。その縛りの中で庄野さんが挑んだのはカレーラーメンだった。 まるわが位置する作草部や西千葉のエリアは、千葉大学をはじめ多くの学校がある文教地区。学生が好きなカレーライスだが、近年カレーの専門店などが閉店したりと、食べる場所が少なくなっているという。そういう背景でこの街にカレーラーメンを根付かせたいというのが、店長の庄野勇さんの思い。 「作草部式焼きラーメン」という名前は、調味料やスープ、そして麺も含めて鍋で焼きながら仕上げていくことから。ある種、タンメンや札幌味噌ラーメンの製法にも近いスタイルとなっている。ベースとなるスープは豚骨で、そこに味噌、カレー粉、小麦粉と生姜やバターを入れて鍋の中でカレースープを作る。隠し味となるのは自家製のトマトパウダー。トマトの酸味は前に出ずに旨味だけを加えたような、まさに隠し味となっている。表面に掛け回されたオリジナルのソースは魚介と辛味をプラスする味変的なアイテム。これらの要素がどれも突出することなくバランスよく配されているので、最後まで飽きずに楽しむことが出来る。 具がないということをまったく意識させず、最後まで一気に食べ切らせてしまう美味しさがあるカレーかけラーメン。残ったスープに白飯を入れてフィニッシュしたくなる。新しいけれど懐かしさをどこか感じさせる力作だ。

【新店】麺屋一男@千葉中央「男そば」750円

 2018年10月、千葉中央駅近くの繁華街、富士見にオープンした新店。新規オープンというよりも、大黒屋本舗のリニューアルと言った方が良いだろうか。千葉の大黒屋本舗は茨城を拠点とする田代グループではなく、増田家グループの経営だったのだけど、現在はトミナガフードサービスなる会社の経営に。千葉大勝軒も増田さんグループでは無くなったようだし、切り分けているのかも知れない。 「男そば」はいわゆる二郎インスパイアのガッツリ系ラーメン。バリエーションとして辛いものや塩味もある。また「女そば」は麺と野菜の量が少ないもののようだ。甘醤油背脂スープに太ストレート麺、そしてモヤシどっさり。 かつて大黒屋本舗がラーメン二郎を激しくデフォルメした事で、良くも悪くも二郎インスパイア系やガッツリ系のデフォルメが過剰になっていって、結果として二郎とはまったく異なるものになっていったわけだが、これはこれでひとつのガッツリ系ラーメンとして完成の域に達していると思う。 ラーメンに求められる役割は色々あり、それは作り手の想いや食べ手の想いでどうとでも変わる。このラーメンは一杯でお腹いっぱいに満たしたい、満たされたいという目的にしっかりと沿っており、特に夜遅い時間帯に無性に欲したくなるラーメンだったりする。屋号は変わってもその志は変わらず。きっと多くのニーズに応える店になっていく事だろう。

らぁ麺ひなた@姉ケ崎「らぁ麺(黒だし)」680円

 2015年にオープンした、「食の道場」出身の店主の店にようやくの訪問。場所は姉崎高校の正面。姉ケ崎高校ではなくて姉崎高校。地名も含めて正しくは「姉崎(あねさき)」。国鉄が駅名に「姉ケ崎(あねがさき)」なんてつけるからややこしくなっているが、ここは姉崎が正しい。 メニューは大きく分けて清湯、白湯の二種で、清湯には黒だし、白だし、熟成しょうゆがあり、白湯には濃厚鶏ぱいたん(しょうゆ)とホワイトクリーミーぱいたん(うま塩)がある。どれにもワンタン麺というオプションがある。まぁこの並びで初訪ならば、やはり清湯の黒だしをオーダーすることになる。 魚節が強く感じられる魚介系スープに、やや竹岡式を想起させる醤油感。薬味のタマネギも含めて房総のラーメンをベースに新たな魚介系ラーメンに仕上げたような。醤油の深いコクと香りを感じさせるが、醤油角や塩味も強く出過ぎることなく、じんわりと優しいスープになっている。麺は三河屋製麺だろうか、歯切れの良い麺をしっかり茹で切っている。具材ではメンマの味付けが甘めで美味しかった。 女性店主の温かみある接客と店の佇まいがホッとする。強烈な印象を残すようなラーメンではないが、誠実に丁寧に作られているのが伝わる一杯。遠方からわざわざ行くほどの吸引力はないが、近くに来られた方や地元の方には自信をもってお勧めしたい、そんな佳店だと思う。少なくとも私はまた足を運んでみたいと思っている。

【新店】ラーメン西山家 君津店@君津「ラーメン」700円

 2018年9月、木更津駅前の屋台で人気だった店の実店舗が君津にオープン。「カレータンタンメン大河家」の跡地。屋台は現在も営業しているそうなので、屋台が本店でこちらは屋台の支店か。店主は千葉の家系ラーメン草分け的存在である、木更津の林家にいた方とか。屋台は未訪なので今回が初となる。 超保守的家系好きとして、昨今の量産型家系ラーメンに辟易としている私としては、こういう「正しい家系ラーメン」の新店は嬉しくて仕方がない。しかし「正しい家系ラーメン」って何なんだろう。この店でラーメンが出て来るまでのあいだ、しばしそんな事を考えていた。 ゲンコツ、背ガラ、鶏ガラなどを使い店内でスープを炊いている。取り切りではなく常時骨を継ぎ足し組み直して、ひたすらスープを取り続けている。麺を平ざるであげ、もちろん変な湯切りパフォーマンスはしない。麺は酒井製麺が望ましい。ホウレンソウは冷凍物が望ましい。レンゲは添えない。ネギは申し訳程度しか入っていない。店主は独学ではなく家系店で修業経験がある。必要以上に愛想を振りまく事なく、短髪でタオルを頭に巻き白の上下。店内BGMはラジオが望ましい。 これぞザ・昭和のラーメン屋。平成も終わろうとしているのに昭和。この店は上記の要素のほとんどをクリアしている。違うところは麺が酒井ではないことと、ホウレンソウが冷凍ではないくらいか。麺は大橋だろうか。屋台の方は湯切りパフォーマンスがあるそうだが、こちらの店はいたって寡黙でシンプルだ。 ノーコール、すべてノーマルで注文したが、やや油多め味濃いめのイメージで出て来た。カエシが強めでやや醤油角が立ったような印象だが、竹岡式でもお馴染みの富津宮醤油を使っているのだとか。この地域ならこのくらいの塩度が丁度良いのかも。鶏油はもう少し甘さが欲しいところだが許容範囲内。 チャーシューは大判でしっかりとしたものが二枚。ホウレンソウは食感がシャキシャキなのは家系っぽくないかな。海苔はヘタレ過ぎず溶けず、ネギも少なめでいい感じ。盛りつけも丁寧で良い顔をしたラーメン。正しい家系の定義はいまだ難しいところだが、この店は私的に正しい家系と言いたくなる、そんな店だ。

【新店】中華蕎麦 ます嶋@千葉中央「中華蕎麦」750円

 11月21日オープン。千葉駅と千葉中央駅の中間ほど、富士見の一蘭向かい、月の坊脇を入った路地に出来た新店。通りから入った路地にあるが、この道はなかなか通る事がない。一応外の通りからは提灯などが見えない事は無いが、立地としてはなかなか厳しい場所。「ます嶋」と書いて「ますじま」と読むよう。 こちらは美光商会という携帯電話代理店やECサイトなどを手掛ける会社の飲食部門。他にも和食店などを営んでいるが、ラーメン業態は初。ファサードや店の作りなどにも個人店とは違う手の入り方が感じられる。L字カウンター9席と比較的小さな店ながら、狭い厨房にはスタッフが5人、ホールにも1人という手厚い配置。オープン2日目の夜にお邪魔したが常に満席だった。 メニューは「中華蕎麦」一本でトッピングのバリエーション。変わったところでは「ばけ」と名付けられた味付きの替え玉。混ぜそばのようにしてそのまま食べられるし、スープにも入れられるというもの。もちろん中華蕎麦をオーダーする。 スープは豚鶏の清湯で、魚介も使っているような味わいで、骨よりも肉を感じるスープだが、取り敢えず白醤油の甘さが印象に強く残る。そして油もかなり多めでオイリーなスープだ。村上朝日製麺の細ストレート麺は春よ恋を使っているとのことで、ややザクッとした食感。具はバラチャーシュー、穂先メンマ、青菜、ネギ、ナルト。 不味くはないし欠点もないとも思うが、特段感動もない。無難なラーメンの設計や店の作り方、オペレーションも含め、実に手慣れていて、良くも悪くもプロの仕事を感じる店。豚骨やガッツリとしたラーメンが多いエリアでの清湯は、ある一定のニーズがあるかとは思うが、果たしてその挑戦は如何に。健闘を期待したい。

【訃報】

 元末広家(中野家)の野中広光さんが10月9日に御逝去されました。 1998年にまだ千葉では数少なかった横浜家系ラーメンを根付かせた先駆者として、横浜家系ラーメン中野家(のちの末広家)を、盟友の中田さんと二人三脚で立ち上げた野中さん。そして神奈川や埼玉に遅れを取っていた千葉のラーメンシーンを盛り上げようと、様々な企画やイベントでご一緒させて頂いた、僕にとっても言わば同志のような存在です。 一時期ラーメン界から離れておりましたが、2年程前からまたラーメンをやりたいと戻って来られて、実は中田さんと共に新店を出そうと物件探しなどをしている最中でした。その繋ぎとして工場勤務をされている仕事中に事故に遭われて不幸な事になりました。51歳の若さ、大変残念で無念でなりません。 前職のドライバー時代からずっと共に生きて来られた中田さんや、新店で同じ厨房に立つ予定だった中田さんの息子さんも悲しみの中にいます。それでも「野中に怒られるから」と気丈に休まず営業をされています。お店に行かれる事があっても、しばらくはどうぞそっとしておいてあげて頂けたらと思います。 お別れは今週の木曜金曜に営まれます。どうぞよろしくお願い致します。御通夜:10月18日(木)18:00〜御葬式:10月19日(金)11:30〜12:30式場:セレモ千葉寺駅ホール(千葉市中央区末広4-25-15 043-261-4444)喪主:野中秋穂 さん※末広家は木曜と金曜を臨時休業します。

【新店】中華蕎麦 円雀@ちはら台「丸鶏中華そば」750円

 2018年9月、ちはら台にオープンした新店。以前「まるきんラーメン」があった跡だろうか。店主は静岡沼津の麺屋卓朗商店出身で、JACKをやられていた方とのこと。どちらも未訪なので真っさらな状態でお邪魔した。一度オープン直後に来たのだけれど電気トラブルか何かで振られたのでリベンジとなる。 基本の「丸鶏中華そば」はその名の通り、鶏油が香る清湯丸鶏スープが印象的な一杯。カエシは優しめのバランスでファーストインプレッションはかなりおとなしい感じ。いい言い方をすれば丸くて優しい、悪い言い方をすればややぼんやりとした印象のスープだが、中盤から後半にかけて塩度がちょうど良くなって来る。麺は細ストレートで、スープとの相性は悪くない。具材は特筆すべき点はないが、やや750円のラーメンのビジュアルとしては弱いかな。 全体的に丁寧な作りであることは間違いないが、やはり気になるのはスープ。地域性を考えてこのくらいのバランスを良しとしたのだろうが、昨今の旨味と生醤油の強い淡麗清湯醤油ラーメンを食べ慣れている舌には、旨味と調味の点でやや物足りなく感じてしまう。それがこの場所でどう受け止められるかが気になる。 東京のラーメン好きがわざわざ足を運ぶ程ではないと思うが、近隣に住む人には普通にオススメ出来る、そんなラーメン。オープンしてまだ一ヶ月足らずなので、時間を置いて再訪して、また違うラーメンを食べてみようと思う。

博多だるまJAPAN イオンモール幕張新都心店@海浜幕張「博多ラーメン」650円

 昔はフードコートといえばレストラン街と較べると格下というイメージしかなかった。その理由の一つとして、そもそもが昔のフードコートには店名らしい店名すらついていなかった。路面の飲食店が出店するというケースは皆無に等しかったと思う。それがいつしかマクドナルドや吉野家などのファストフード業態が出店するようになり、フードコートの店に名前がつくようになった。それが今ではナショナルチェーンではない店が出店するようになっている。特にラーメン界ではそれが著しい。 博多だるまは言わずと知れた福岡の老舗ラーメン店である。そのフードコート業態が博多だるまJAPAN。イオンモール幕張新都心のフードコート「LIVE KITCHEN」にはオープン当初から出店している。まさかだるまのラーメンをフードコートで食べられるようになるとはなぁ。しかも千葉で。 久々の訪問なので改めて基本の「博多ラーメン」を。このメニュー名にはやや違和感を覚える。博多ではラーメンと言えば博多ラーメンや豚骨ラーメンを指すので、メニュー名はどこの店も大概が「ラーメン」だ。だから博多の人間が初めて東京のラーメン店で「ラーメン」と頼んで透明な醤油ラーメンが出て来て驚いたという話があるほど。 粘度と濃度がある豚骨スープはタレの味わいがやや強めに出ていて、クッキリとした輪郭が感じられる味わい。かなり乳化している上に油分も多いスープだが、強めのタレが全体を引き締めていてぼやけた感じがしない。極細ストレート低加水麺も硬めに茹で上げてある。紛うことなき関東人がイメージするステレオタイプな博多ラーメンになっている。 それは別の言い方をすればストレートな博多ラーメンとはちょっと違い、ある一定のローカライズがなされているということなのだが、ただ博多だるまのラーメンは福岡でも濃度や粘度が高く、ある意味で異端の存在でもある。そういう意味では比較的本場の味に近いものを出していると言って良いだろう。