麺 松風(松戸)

 松戸駅周辺は言わずと知れたラーメン激戦区。そしてあらゆるジャンルのラーメンが揃う場所でもある。そんな松戸駅の東口から歩いて3分の線路沿いに2021年8月オープンしたばかりの新店だ。
 店主の齋藤太一さんは、ラーメンシーンを牽引する『博多一風堂』出身。一風堂で20年以上のキャリアを持ち、暖簾分け店主として店を任されていたこともあるベテラン職人だ。私も20年近く前からお付き合いのある人だけに、今回自身の店を地元の松戸で出されたことは、とても嬉しく感じている。
 5席ほどのストレートカウンターと小さなテーブル、そして立ち飲みスペースがある小さな店舗だが、狭苦しさは感じない空間になっていた。メニューはシンプルにラーメンとトッピングバリエーション、そしてご飯もの。訪問時には餃子は無かったが落ち着いた頃に提供予定だとのこと。
 一風堂のベテランという先入観を持っていると一風堂に引きずられてしまいがちだが、一風堂らしさを感じるのはタレの醤油感くらいで、ちゃんと松風の博多豚骨ラーメンになっているのはさすがだ。豚骨の臭みは排して旨味を抽出したスープが実に良い。
 スープの旨味の出方が一風堂とは異なっているのは、製法や骨の部位なども多分に影響しているだろう。一風堂のスープは「取り切り」で、その日のうちに使い切るが、松風のスープは「呼び戻し」で、前日のスープをタネに継ぎ足していくスタイル。これには、齋藤さんが一風堂傘下の『名島亭』でも働いていた経験が生かされているのだろう。
 麺は菅野製麺の低加水細ストレート麺で、後半までヘタれることなくしっかり存在感をアピール。一風堂よりもやや麺量も多め。具にモヤシを入れているのは一風堂的。途中から辛子高菜や辛モヤシを投入して味の変化を楽しむのも一興だ。
 店名の『松風』の由来として「松戸で一風堂の風を吹かせる」というのは、ネットで拡散したある意味で間違い。それなら一風堂の暖簾分けを続けていれば良い。齋藤さんは齋藤さんらしく、生まれ育った松戸の地で新しい風を吹かせる、というのが真意だろう。
 齋藤さんが一風堂から受け継いだのは味ではなくて心、一風堂イズム。「笑顔とありがとう」が溢れる空間が松戸に出来たこと、そして齋藤さんが元気に厨房に立っていることが何より嬉しい。

麺 松風
松戸市松戸1291-4

11:00〜15:00,18:00〜20:00/土日祝11:00〜19:00
月曜定休
JR線・新京成線「松戸」駅より徒歩3分


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